ハラスメント防止のための適切な文書表現集｜NGワードと代替表現

職場でのコミュニケーションにおいて、自分では何気なく使っている言葉が相手を傷つけたり、ハラスメントとなってしまうケースが増えています。

厚生労働省の調査によると、ビジネスマナーで不快に感じた理由として最も多いのは「言葉遣い・敬語の使い方」であり、職場環境の悪化や訴訟リスクにもつながる深刻な問題です。

本記事では、職場で使うべきでないNGワードとその適切な代替表現を紹介し、ハラスメントのない健全な職場環境づくりに役立てていただければ幸いです。

この記事でわかること

ハラスメントに該当する言葉の特徴と種類
ビジネスシーンで使うべきでないNGワードの具体例
各シーン別の適切な代替表現とその使い方
文書・メールでのハラスメント防止のポイント
職場でのハラスメント防止対策の具体的方法

ハラスメントは言葉の選び方一つで防げます。

この記事を参考に、より良いコミュニケーションを心がけましょう。

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ハラスメントとNGワードの基本知識
職場での一般的なNGワードと代替表現
ハラスメント別のNGワードと適切な表現
シーン別・状況別の適切な表現例
文書・メールでの表現の注意点
ハラスメント防止のための実践テクニック
NGワードを使ってしまった時の対処法
まとめ：健全な職場コミュニケーションのために

ハラスメントとNGワードの基本知識

ハラスメントとは、相手に不快感や不利益を与える言動のことです。

特に職場におけるハラスメントは、個人の尊厳を傷つけるだけでなく、組織全体の生産性低下や人材流出などの深刻な問題を引き起こします。

ハラスメントの定義と種類

ハラスメントは大きく分けて以下の種類があります。

パワーハラスメント：職場での優位性を利用した精神的・身体的な苦痛を与える言動
セクシャルハラスメント：性的な言動により相手に不快感を与える行為
マタニティハラスメント：妊娠・出産・育児に関連して行われる嫌がらせ
その他のハラスメント：モラハラ、カスハラ（顧客からのハラスメント）など

NGワードとなる言葉の特徴

NGワードとなりやすい言葉には、以下のような特徴があります。

相手の人格や能力を否定する言葉
- 例：「使えない」「バカじゃないの？」
差別的な表現や偏見を含む言葉
- 例：性別や国籍、年齢などに関する差別的発言
一方的な押し付けや強制を含む表現
- 例：「～しかない」「必ず～すべき」
曖昧で責任の所在が不明確な表現
- 例：「とりあえず」「なんとなく」

間違いやすいポイント

NGワードについての誤解で最も多いのは、「自分がハラスメントのつもりがなくても、相手が不快に感じればハラスメントになる」という点です。

加害者の意図よりも、受け手の感じ方が重視される点を理解しておく必要があります。

職場での一般的なNGワードと代替表現

職場で日常的に使われがちだが避けるべき言葉を紹介します。

敬語・マナー関連のNGワード

NGワード	理由	適切な代替表現
「了解です」	「許可を与える」という上から目線の意味合いがある	「承知しました」「かしこまりました」
「ご苦労様です」	目上の人が目下の人に使う言葉	「お疲れ様です」
「なるほど」	相手の意見を評価しているように聞こえる	「ご意見ありがとうございます」
「すいません」	口語表現であり、文書では不適切	「申し訳ございません」
「わかりました？」	上から目線で威圧的	「ご不明な点はありませんか？」

上から目線・威圧的な表現

NGワード	理由	適切な代替表現
「当然できますよね」	プレッシャーを与え、相手を追い詰める	「可能な範囲でお願いできますか」
「簡単なことです」	相手の能力を軽視している印象を与える	「手順をご説明しますので、一緒に進めましょう」
「これくらい常識でしょ」	相手を見下している印象を与える	「一般的にはこのように考えられています」
「私が言ったとおりにして」	一方的な押し付け	「このやり方を参考にしていただけますか」

曖昧で責任の所在が不明確な表現

NGワード	理由	適切な代替表現
「とりあえず」	責任感のなさや不誠実さを感じさせる	「まずは」「第一段階として」
「たぶん」「きっと」	不確かさを示し、信頼性に欠ける	「現時点では～と考えられます」「確認したところ～です」
「～しておきます」	片手間にやる印象を与える	「～いたします」「～を行います」
「できません」	一方的な拒否	「～の理由により、別の方法を提案します」

間違いやすいポイント

友人との会話では問題なくても、ビジネスシーンでは不適切になる言葉が多くあります。

特に文書やメールでは、表情や声のトーンが伝わらないため、より丁寧な表現を心がける必要があります。

ハラスメント別のNGワードと適切な表現

ここでは、ハラスメントの種類別にNGワードと適切な表現を紹介します。

パワーハラスメントに関連するNGワード

パワーハラスメントとは、職場での優位性を背景に、業務の適正範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える行為です。

NGワード	理由	適切な代替表現
「使えない」「ダメ社員」	人格否定・侮辱	「この部分を改善しましょう」「次はこうしてみませんか」
「こんな簡単なこともわからないの？」	能力否定・侮辱	「どの部分が難しいですか？一緒に確認しましょう」
「他の人はできているのに」	比較による精神的圧力	「あなたの強みを活かすにはどうすれば良いか考えましょう」
「もういい、俺がやる」	仕事の取り上げ・やる気の減退	「こうすれば効率が上がりますよ、試してみましょう」
「何回言えばわかるんだ」	過度な叱責・人格否定	「別の角度から説明しますね」「一緒に確認していきましょう」

セクシャルハラスメントに関連するNGワード

セクシャルハラスメントとは、相手の意に反する性的な言動のことです。

NGワード・表現	理由	適切な代替表現・対応
「今日はかわいいね/かっこいいね」	容姿へのコメントは不快感を与える可能性がある	「お疲れ様です」など業務に関する挨拶にする
「彼氏/彼女いるの？」「結婚しないの？」	プライベートへの不必要な干渉	個人的な質問は避け、業務に関する会話にする
「男のくせに/女のくせに」	性別による固定観念・差別的表現	性別に関係なく個人の能力や特性に注目した表現を使う
「飲み会に来ないと評価に影響するよ」	強制・脅迫的表現	「都合がつけば参加してください」と強制しない

マタニティハラスメントに関連するNGワード

マタニティハラスメントとは、妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益な取扱いや嫌がらせです。

NGワード	理由	適切な代替表現・対応
「妊娠するなら言ってほしかった」	妊娠を否定的に捉えている	「おめでとうございます。どうサポートできるか相談しましょう」
「迷惑かけるなら辞めたら？」	退職勧奨・不利益取扱い	「業務調整について一緒に考えましょう」
「また休むの？」	育児休業等への嫌がらせ	「ご家族の状況はいかがですか？必要なサポートはありますか」
「子どものためには仕事を辞めた方がいいのでは」	個人の選択への干渉・退職勧奨	本人の希望を尊重し、両立支援制度を案内する

間違いやすいポイント

職場での冗談のつもりでも、受け手にとっては不快な言葉になることがあります。

特に立場や状況の違いを配慮せず、自分の価値観で判断して発言することが問題を生みやすいので注意しましょう。

シーン別・状況別の適切な表現例

職場の様々なシーンで使える適切な表現例を紹介します。

指導・アドバイスの場面

NGワード	適切な代替表現
「なぜできないのか」	「どこが難しいと感じましたか？」
「ミスばかりしている」	「こちらの部分に注意すると良くなりますよ」
「周りに迷惑をかけている」	「チームでもっと効率良く進めるために工夫しましょう」
「こんなことも知らないのか」	「この知識は重要なので、一緒に確認しておきましょう」
「やる気があるのか」	「どんなことに興味がありますか？強みを活かせる方法を考えましょう」

実践例：指導の仕方

NGの例

「この程度のミスを何度も繰り返すなんて、やる気がないんじゃないの？他の人はちゃんとできているのに。」

適切な例

「このミスが起きた原因を一緒に考えてみましょう。どの部分が難しかったですか？改善点を見つけて、次に活かしていきましょう。」

評価・フィードバックの場面

NGワード	適切な代替表現
「全然ダメだね」	「改善すべき点をいくつか挙げます。まず…」
「期待はずれだった」	「次の目標として、これらの点に注力するといいでしょう」
「あなたには無理だ」	「このようなアプローチをすると、より成果が上がるかもしれません」
「努力が足りない」	「どのような支援があれば成長できるか一緒に考えましょう」

実践例：フィードバックの仕方

NGの例

「この半年の成果は期待外れです。努力が足りないのではないでしょうか。このままでは評価は上がりません。」

適切な例

「これまでの成果の中で良かった点は○○です。さらに成長するために、△△の部分を強化すると良いでしょう。具体的には…」

業務依頼・指示の場面

NGワード	適切な代替表現
「すぐにやっておいて」	「可能であれば○○日までにお願いできますか？」
「なんでこんなことできないの」	「この作業のどの部分が難しいですか？サポートします」
「とりあえずやっといて」	「具体的には○○の作業をお願いします」
「言った通りにやって」	「このような方法で進めていただけますか」

実践例：業務依頼の仕方

NGの例

「この資料、今日中に仕上げておいて。簡単な内容だから、すぐできるでしょ。」

適切な例

「この資料の作成をお願いできますか？必要な項目は○○で、△△日までに完成させたいと考えています。スケジュール的に可能でしょうか？」

間違いやすいポイント

指導やフィードバックの場面では特に感情的になりやすく、つい強い言葉を使ってしまいがちです。

しかし、相手の成長や改善を促すためには、具体的かつ建設的な表現を心がけることが重要です。

文書・メールでの表現の注意点

文書やメールでのコミュニケーションは、表情や声のトーンが伝わらないため、より慎重な言葉選びが必要です。

文書・メールでよく使われるNGワード

NGワード	理由	適切な代替表現
「御社様」	二重敬語	「貴社」
「お願いしておきます」	「～ておく」は軽い印象	「お願いいたします」
「取り急ぎご連絡まで」	省略した表現で失礼	「取り急ぎご連絡申し上げます」
「大丈夫です」	曖昧で上から目線に感じられる	「問題ありません」「承知いたしました」
「すいません」	口語表現	「申し訳ございません」

敬語の使い方の注意点

ビジネス文書では適切な敬語の使用が重要です。

特に以下の点に注意しましょう。

二重敬語を避ける
- NG：「ご説明させていただいております」
- OK：「ご説明しております」または「説明させていただいております」
謙譲語と尊敬語の使い分け
- 自分の行動：謙譲語（「お伺いします」「拝見します」）
- 相手の行動：尊敬語（「いらっしゃいます」「なさいます」）

ビジネスメールの例文

丁寧な依頼メールの例

NGな例：

田中さん

レポートの件、早急に対応しておいてください。
期限は明日までです。簡単な内容なので、すぐできるでしょう。
とりあえず、よろしく。

鈴木

適切な例：

田中様

お世話になっております。○○部の鈴木です。

標記のレポートについて、ご対応をお願いできますでしょうか。
期限は○月○日（○）までとなっております。

ご多用のところ恐縮ですが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

------------------
株式会社○○
△△部 鈴木一郎
TEL: xxx-xxxx-xxxx
Email: xxxx@xxx.co.jp

間違いやすいポイント

メールは記録として残るため、文面をより丁寧に整える必要があります。

特に急いでいるときこそ、相手への配慮を示す言葉を意識的に入れることが大切です。

ハラスメント防止のための実践テクニック

ハラスメントを防止するための実践的なテクニックを紹介します。

日常的なコミュニケーションの改善法

「I（アイ）メッセージ」の活用
- NG：「あなたの報告書は分かりにくい」（相手を非難）
- OK：「私はこの部分が理解しづらいと感じました」（自分の受け止め方を伝える）
クッション言葉の活用
- NG：「これは間違っています」
- OK：「恐れ入りますが、この部分は確認が必要かもしれません」
オープンクエスチョンの活用
- NG：「なぜできなかったの？」（責める質問）
- OK：「どのような困難がありましたか？」（状況を理解する質問）

ハラスメント防止のための組織的取り組み

定期的な研修の実施
- ハラスメントの定義や具体例を学ぶ
- ロールプレイで適切な表現を練習する
相談窓口の設置
- 匿名で相談できる仕組みづくり
- 外部の専門家への相談ルートの確保
ハラスメント防止ガイドラインの作成と周知
- 具体的なNGワードと代替表現の例を明示
- 定期的な見直しと更新

自己チェックリスト

ハラスメントを防止するための自己チェックリストです。

□ 感情的になっていないか冷静に確認している
□ 相手の立場や状況を考慮した言葉を選んでいる
□ 命令形や断定的な表現を避けている
□ 個人の属性（性別、年齢、国籍など）に関する発言を控えている
□ プライベートに踏み込む質問を避けている

間違いやすいポイント

ハラスメント防止の取り組みは「言葉狩り」ではなく、相互理解と尊重の文化づくりが目的です。

単に言葉を言い換えるだけでなく、相手を尊重する姿勢や組織風土の醸成が重要です。

NGワードを使ってしまった時の対処法

万が一、NGワードを使ってしまった場合の対処法を紹介します。

即座の対応方法

素直に謝罪する
- NG：「そんなつもりはなかった」（言い訳）
- OK：「不適切な発言をして申し訳ありませんでした」
なぜ不適切だったのかを認識する
- 自分の言葉がどのように受け取られる可能性があるか理解する
適切な表現で言い直す
- 「先ほどの発言は不適切でした。改めて〇〇と申し上げます」

再発防止のための自己啓発

日常的に適切な表現を学ぶ
ハラスメントに関する書籍や研修に積極的に参加する
信頼できる同僚や上司からフィードバックをもらう

具体的な謝罪の例文

NG発言をした場合

「申し訳ありません。先ほど『なぜこんな簡単なことができないの』と申し上げましたが、これは不適切な表現でした。改めて『どの部分が難しかったですか？一緒に確認していきましょう』と申し上げます。」

メールでNG表現を使った場合の謝罪メール

件名：先ほどのメールについてのお詫び

○○様

先ほど送信いたしましたメールの中で、不適切な表現がございました。
「すぐに対応しておいてください」という言い方は、配慮に欠けた表現でした。

正しくは「ご対応をお願いできますでしょうか」という趣旨でお伝えすべきでした。
不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございませんでした。

今後はより丁寧な言葉遣いを心がけます。
何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。