物を動かすとき、会議の時間を変更するとき、私たちは何気なく「ずらす」という言葉を使います。
しかし、ビジネスシーンでは、より丁寧な表現や状況に応じた言い換えが求められることも多いものです。
この記事では、「ずらす」の正しい表記(「づらす」ではなく「ずらす」が正解です)から、ビジネスシーンで使える実践的な言い換え表現、メール例文まで幅広く解説します。
この記事でわかること
- 「ずらす」の正しい表記と「づらす」との違い
- ビジネスメールで使える丁寧な「ずらす」の言い換え表現
- 上司・同僚・取引先別の適切な例文テンプレート
- シーン別(会議変更・納期調整など)の効果的な表現方法
- 英語での「ずらす」に相当する表現リスト
会議の時間変更や納期調整など、日常的に「ずらす」を使う場面は多いものです。
この記事を参考に、状況に応じた適切な表現を身につけましょう。
すぐに使えるビジネスシーン別「ずらす」の言い換え表現と例文
ビジネスシーンでは、単に「ずらす」と表現するよりも、丁寧な言い換え表現を使うことで、より洗練された印象を与えることができます。
相手や状況に応じた表現例を紹介します。
上司への会議時間変更依頼
上司へのコミュニケーションでは、適切な敬意を示しながらも、明確に意図を伝えることが大切です。
基本例文テンプレート
件名:本日の会議時間調整のお願い
○○部長
お世話になっております。
△△です。
本日15時からの会議について、急な対応が入ってしまい、
30分ほど調整させていただくことは可能でしょうか。
16時以降でしたら参加可能です。
ご検討いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
丁寧な言い換え表現リスト
- 「会議を30分ずらしていただく」→「会議を30分調整させていただく」
- 「時間をずらす」→「時間を変更させていただく」
- 「予定をずらす」→「スケジュールを調整させていただく」
- 「打ち合わせをずらす」→「打ち合わせの時間変更をお願いする」
取引先への納期変更連絡
取引先とのコミュニケーションでは、最大限の配慮が必要です。
納期の変更は特に慎重な表現が求められます。
基本例文テンプレート
件名:納品日程の調整のお願い
株式会社〇〇
△△様
いつもお世話になっております。
××株式会社の□□でございます。
先日ご発注いただきました商品の納品について、
部品調達の遅延により、
当初の予定から1週間納期を延期させていただきたく、
ご相談させていただきます。
新たな納品日として、5月20日を予定しております。
ご検討いただけますと幸いです。
ご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんが、
何卒よろしくお願い申し上げます。
丁寧な言い換え表現リスト
- 「納期をずらす」→「納期を延期させていただく」
- 「期限をずらす」→「期限を調整させていただく」
- 「日程をずらす」→「日程変更のご相談をさせていただく」
- 「予定をずらす」→「予定日を再設定させていただく」
同僚との予定調整
同僚とのコミュニケーションでは、適度な丁寧さと簡潔さのバランスが重要です。
基本例文テンプレート
件名:本日の打ち合わせ時間変更のお願い
田中さん
お疲れさまです。
佐藤です。
本日14時の打ち合わせですが、
急な来客対応が入ってしまい、15時に変更していただけないでしょうか。
ご都合はいかがでしょうか。
カジュアルな言い換え表現リスト
- 「打ち合わせをずらす」→「打ち合わせを少し遅らせる」
- 「時間をずらす」→「時間を少し後にする」
- 「予定をずらす」→「予定を変更する」
- 「ミーティングをずらす」→「ミーティングの時間を調整する」
会議やイベントの時間変更アナウンス
複数の関係者に向けた案内では、明確さと具体性が特に重要になります。
基本例文テンプレート
件名:プロジェクト会議の時間変更について
プロジェクトメンバーの皆様
お世話になっております。
プロジェクト事務局の山田です。
明日予定しておりました10:00からのプロジェクト進捗会議について、
役員会議の延長により、開始時間を11:00に変更させていただきます。
会議資料は予定通り本日中にお送りいたします。
ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。
フォーマルな言い換え表現リスト
- 「会議をずらす」→「会議の開始時間を変更する」
- 「予定をずらす」→「予定を調整する」
- 「時間をずらす」→「開催時間を変更する」
- 「スケジュールをずらす」→「スケジュールを再調整する」
メール・会話シーン別「ずらす」の使い方
「ずらす」という表現は、コミュニケーションの方法や状況によっても使い分けが必要です。
メールや会話など、シーン別の効果的な使い方を解説します。
メールでの効果的な「ずらす」表現
ビジネスメールでは、文書の形式や表現の丁寧さが特に重要です。
「ずらす」を使う際のポイントを紹介します。
メールでの基本構造
- 件名を具体的に(例:「〇月〇日の会議時間変更のお願い」)
- 冒頭の挨拶
- 変更が必要な理由の簡潔な説明
- 具体的な変更内容の提案
- 相手への配慮を示す表現
- 締めの挨拶
失敗しないためのポイント
- 理由は簡潔に述べる(詳細すぎる説明は逆効果)
- 具体的な代替案を必ず提示する
- 変更によって生じる影響への対応策も示す
- 謝意を適切に表現する
電話での「ずらす」表現テクニック
電話では、即時的なコミュニケーションが求められるため、簡潔さと明確さが特に重要です。
電話での基本フロー
- 自己紹介と用件の概要
- 変更が必要な理由の簡潔な説明
- 具体的な変更内容の提案
- 相手の都合の確認
- 合意と感謝の表明
電話での効果的な言い回し例
- 「急な対応が入りまして、本日の打ち合わせ時間を調整させていただきたいのですが」
- 「会議の開始時間を30分遅らせていただくことは可能でしょうか」
- 「予定変更のご相談でお電話させていただきました」
- 「スケジュールの再調整について、ご相談させていただきたく」
会議中の「ずらす」提案方法
会議中に日程や時間の変更を提案する場合は、参加者全員への配慮と明確な説明が必要です。
会議での効果的な提案例
- 「次回の会議日程について、多くの方のご予定を考慮し、一週間後に変更することを提案させていただきます」
- 「資料準備の都合上、プレゼンの順序を変更させていただけないでしょうか」
- 「より詳細な議論のため、この議題の討議時間を延長することは可能でしょうか」
「ずらす」と「づらす」の違いと基本的な使い方
正しく表記するためには、「ずらす」と「づらす」の違いを理解することが大切です。
ここでは、基本的な意味と使い方を解説します。
「ずらす」が正しい理由と文法的根拠
「ずらす」は「ずれる」という自動詞から派生した他動詞です。
日本語の動詞には、自動詞と他動詞という二つの種類があります。
- 自動詞:「〜が」という主語をとり、物事が自然に起こる様子を表す 例:「時計がずれる」「予定がずれる」
- 他動詞:「〜を」という目的語をとり、誰かが意図的に行う動作を表す 例:「時計をずらす」「予定をずらす」
この文法規則に基づき、「ずらす」という表記が正しいとされています。
「づらす」との混同が起きる理由
「づらす」と書いてしまう主な理由は、発音の類似性にあります。
日本語には「ず」と「づ」の両方が存在し、発音がほぼ同じであるため、多くの人が混乱してしまいます。
以下のような言葉でも同様の間違いが見られます。
- 「気まずい」を「気まづい」と書く
- 「きずな(絆)」を「きづな」と書く
- 「築く(きずく)」を「きづく」と書く
「づ」を使う場合の基準
文化庁が定める現代仮名遣いのルールでは、「づ」を使用する場合を明確に定めています。
- 同音の繰り返しの場合:「つづく」「つづる」など
- 二つの語が結合する場合:「手づくり(て+つくり)」「かたづける(かた+つける)」など
それ以外の場合は基本的に「ず」を使用します。
状況別の「ずらす」効果的な使い分け
「ずらす」は様々な状況で使用できる便利な表現ですが、場面に応じた適切な使い分けが重要です。
ここでは、具体的な状況別の使い方を解説します。
物理的な移動を表す「ずらす」
物の位置や配置を変更する際に使用する基本的な用法です。
特に微調整や小さな位置の変更を表すのに適しています。
実践例
- 「プロジェクターの位置を少しずらして、全員が見やすいようにしました」
- 「会議テーブルの配置をずらして、打ち合わせスペースを確保しました」
- 「資料のレイアウトを少しずらすだけで、見やすさが大幅に向上します」
ビジネスでの言い換え表現
- 「位置を調整する」
- 「配置を変更する」
- 「レイアウトを微調整する」
時間や予定の変更を表す「ずらす」
ビジネスシーンで最も頻繁に使用されるのが、スケジュールや時間の調整を表す用法です。
実践例
- 「参加者全員の都合を考慮し、会議を1時間ずらしました」
- 「システムメンテナンスのため、サービス開始時間をずらす必要があります」
- 「通勤時間をずらすことで、混雑を避けることができます」
ビジネスでの言い換え表現
- 「時間を調整する」
- 「スケジュールを変更する」
- 「開始時間を延期する」
- 「予定を再設定する」
抽象的な概念における「ずらす」
より高度な表現として、視点や考え方などの抽象的な変更を表す場合にも使用できます。
実践例
- 「発想をずらすことで、新たなビジネスチャンスが見えてきました」
- 「議論の焦点をずらして、より本質的な問題に取り組むべきです」
- 「従来の視点をずらすことで、革新的なアイデアが生まれました」
ビジネスでの言い換え表現
- 「視点を転換する」
- 「発想を転換する」
- 「思考の軸をシフトする」
- 「観点を変える」
ビジネス英語での「ずらす」表現
グローバルビジネスの場面では、「ずらす」に相当する適切な英語表現を選ぶことも重要です。
状況に応じた英語表現を紹介します。
時間や予定を「ずらす」英語表現
予定や時間の変更を英語で表現する際は、状況や丁寧さのレベルに応じて適切な表現を選択します。
フォーマルな表現例
- reschedule:「Would it be possible to reschedule our meeting to 2 PM?」
- postpone:「We need to postpone the deadline by one week.」
- adjust the schedule:「I’d like to adjust the schedule for our weekly meeting.」
カジュアルな表現例
- move:「Can we move our call to later today?」
- shift:「Let’s shift the meeting to tomorrow morning.」
- push back:「We might need to push back the launch date.」
物を「ずらす」英語表現
物理的な移動を表現する場合、動作の大きさや意図によって使用する単語が異なります。
状況別の適切な表現
- shift:「Could you shift your chair a little to make room?」
- adjust:「Please adjust the position of your microphone.」
- move slightly:「Could you move the table slightly to the left?」
- reposition:「We need to reposition the equipment for better visibility.」
視点や考えを「ずらす」英語表現
抽象的な概念の変更を表現する場合の英語表現です。
ビジネスシーンでの使用例
- shift perspective:「Let’s shift our perspective and look at this from the customer’s point of view.」
- change focus:「We need to change our focus from short-term profits to long-term growth.」
- pivot:「The team decided to pivot their approach to the problem.」
- reframe:「Reframing the issue helped us find a better solution.」
実践時の注意点と失敗例
「ずらす」を使用する際によくある間違いや注意点を紹介します。
適切な使用方法を身につけ、コミュニケーションの質を高めましょう。
表記と敬語の間違い
「ずらす」の表記や敬語表現の組み合わせに関する典型的な間違いです。
よくある間違い例
🚫 誤:「会議をづらしていただけますか」
✅ 正:「会議をずらしていただけますか」
🚫 誤:「時間をずらすことをお願いします」(敬語表現が不適切)
✅ 正:「時間を調整させていただきたくお願い申し上げます」
🚫 誤:「予定をずらしてくれますか」(目上の人への表現として不適切)
✅ 正:「予定を変更していただくことは可能でしょうか」
状況に不適切な「ずらす」の使用
「ずらす」は比較的小さな変更を表すため、大きな移動や変更には別の表現が適切です。
不適切な使用例
🚫 誤:「オフィスを東京から大阪にずらします」(大幅な移動)
✅ 正:「オフィスを東京から大阪に移転します」
🚫 誤:「プロジェクトを完全にずらします」(大幅な変更)
✅ 正:「プロジェクトを全面的に変更します」
コミュニケーション上の失敗例
「ずらす」を使った依頼や提案における、コミュニケーション上のよくある問題点です。
失敗例とその対処法
🚫 失敗例:理由説明なしに「会議をずらしてください」と依頼
✅ 改善策:「急な対応が入ったため、会議を30分調整させていただきたい」と理由と具体的な時間を明示
🚫 失敗例:代替案なしに「納期をずらさせてください」と依頼
✅ 改善策:「部品調達の遅延により、納期を1週間延期し、5月20日とさせていただきたい」と具体的な代替案を提示
まとめ
この記事では、「ずらす」のビジネスでの使い方について詳しく解説しました。
重要なポイントを整理すると
- 正しい表記は「ずらす」で、「づらす」は誤り
- ビジネスシーンでは「調整する」「変更する」などの言い換え表現が効果的
- 相手や状況に応じて、適切な丁寧さレベルの表現を選ぶことが重要
- メール・電話・会議など、コミュニケーション手段に応じた表現の違いを理解する
- 変更理由と具体的な代替案を明示することでスムーズなコミュニケーションが可能に
- グローバルビジネスでは状況に応じた適切な英語表現を選択する
「ずらす」という一見シンプルな言葉も、ビジネスシーンでは適切な使い分けが求められます。
この記事で紹介した表現例やテンプレートを参考に、状況に応じた効果的なコミュニケーションを心がけましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: 「ずらす」と「変更する」の違いは何ですか?
A1: 「ずらす」は比較的小さな変更や微調整を表す場合に適しています。
特に時間や位置の微調整に使います。
一方、「変更する」はより広い意味を持ち、大きな変更や本質的な変更も含みます。
ビジネスシーンでは「変更する」の方がより丁寧で公式な印象を与えることが多いです。
Q2: 取引先へのメールで「ずらす」という表現は失礼になりますか?
A2: 「ずらす」という表現自体は失礼ではありませんが、取引先へのフォーマルなメールでは「調整させていただく」「変更のご相談をさせていただく」などの丁寧な言い換え表現を使う方が適切です。
また、変更理由と具体的な代替案を明示することで、より誠実な印象を与えることができます。
Q3: 英語で「会議をずらす」と言いたい場合、最も適切な表現は?
A3: 英語で「会議をずらす」と言いたい場合、”reschedule the meeting”が最も一般的で適切な表現です。
より丁寧に言いたい場合は、”I would like to request rescheduling our meeting”などと表現できます。カジュアルな状況では、”Can we move our meeting to later?”などの表現も使えます。
Q4: 「ずらす」と「延期する」の使い分けはどうすればよいですか?
A4: 「ずらす」は時間を前後どちらにも変更できることを意味しますが、「延期する」は必ず後ろに伸ばすことを意味します。
例えば「会議を早めたい」という場合は「会議を前にずらす」は適切ですが、「会議を延期する」は不適切です。
納期や締切りを後ろに伸ばす場合は「延期する」の方が明確で適切な表現となります。