ビジネスシーンにおいて、適切な敬語の使用は非常に重要です。
特に「いたします」と「します」の使い分けは、多くの人が悩む点の一つです。
この記事では、これらの表現の違いや使用場面、さらには「いたします」「します」が混在する状況について詳しく解説します。
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「いたします」と「します」の基本的な違い

「いたします」は「します」の丁寧な言い方です。両者の主な違いは以下の通りです。
「します」
- 基本的な丁寧語
- 日常会話やカジュアルなビジネスシーンで使用
「いたします」
- より丁寧な表現
- フォーマルなビジネスシーンや目上の人との会話で使用
これらの違いを理解することで、状況に応じた適切な表現を選択できるようになります。
「いたします」の使用場面と文例

「いたします」は主に以下のような場面で使用されます。
- 顧客や取引先との会話
例1「ご注文の商品は明日お届けいたします。」
例2「資料をお送りしますので、ご査収くださいませ。」 - 上司や目上の人との会話
例1「報告書は本日中に提出いたします。」
例2「詳細を確認いたしましたら、追ってご連絡いたします。」 - 公式な文書や電子メール
例1「今回のご提案について、詳細をご説明いたします。」
例2「本件について改めてご報告いたします。」
「いたします」は、相手に敬意を示す表現として重要です。
上記の例文は、特に目上の人や顧客とのやり取りで好印象を与えるものです。
特にフォーマルな場面では、「いたします」を使うことで文章の丁寧さを高めることができます。
「します」の使用場面と文例

一方、「します」は以下のような場面で適しています。
- 同僚や部下との日常的な会話
例1「今日の会議で新しいプロジェクトについて説明します。」
例2「明日、資料を送りますね。」 - カジュアルなビジネス環境での会話
例1「明日のミーティングで新しいアイデアを提案します。」
例2「会議の内容をこちらで確認します。」 - 一般的な説明や案内
例1「この製品は来月から販売を開始します。」
例2「この件について、チームで話し合いをします。」
「します」はビジネスシーンで幅広く使用できる便利な表現です。
上記の例文は、同僚や部下との日常的な会話やカジュアルなコミュニケーションで使いやすいものです。
カジュアルさを保ちながらも丁寧さを損なわない使い方がポイントです。
「いたします」と「します」の混在
実際のビジネスコミュニケーションでは、「いたします」と「します」が混在することがあります。
これは必ずしも間違いではありませんが、一貫性を保つことが重要です。
混在が生じる主な理由は以下の通りです。
話し手の意識の変化と文例

「いたします」と「します」の混在は、話し手が会話中に意識的または無意識的に敬語のレベルを調整する際によく起こります。
特に、相手との関係性や会話の状況が変化すると、それに応じて使い分けが自然に行われることがあります。
- 例1「本件について調査いたします。その結果を次回会議で報告します。」
(最初は丁寧表現の「いたします」を使用し、その後カジュアルな「します」に切り替え。) - 例2「ご質問ありがとうございます。確認して回答いたします。また、別件についても詳細を送ります。」
(「いたします」で丁寧さを示し、「します」でカジュアルな流れに。) - 例3「会議資料を準備いたしましたので、ご確認をお願いします。詳細な内容は後で説明します。」
(会議の準備段階では「いたします」、説明段階では「します」を使用。)
このような混在は、状況や相手の立場に応じて調整された結果です。
ただし、文章全体の一貫性が崩れると、読み手に違和感を与える可能性があるため、必要に応じて文体を統一することを検討しましょう。
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文脈や表現による使い分けと文例

文章内で「いたします」と「します」を使い分ける場合、文脈や強調したい内容に応じて適切に選択することが重要です。
特に、フォーマルな内容や強調したい部分には「いたします」、その他の部分には「します」を使うケースがよく見られます。
- 例1「ご意見を伺い、社内で検討いたします。次回の会議で結果をご報告します。」
(フォーマルな部分で「いたします」、簡潔な報告部分で「します」。) - 例2「資料をお送りしますので、ご確認いただければ幸いです。また、不明点があればこちらで確認します。」
(補足的な部分は「いたします」、主要部分は「します」。) - 例3「お客様のお問い合わせを最優先で対応いたします。その後の進捗については随時お知らせします。」
(最初は丁寧な「いたします」を使用し、その後は「します」で簡潔さを意識。)
このように使い分けることで、文章全体のトーンを柔軟に調整できます。
ただし、同じ文書内で頻繁に切り替えると統一感が損なわれる可能性があるため、重要な部分での使用を意識しましょう。
習慣や個人の好みと文例
「いたします」と「します」の使い分けは、話し手の言語習慣や個人的な好みにも影響されます。
特に、自分が慣れ親しんだ表現や、業界の慣例に基づいて使い分けるケースが多く見られます。
- 例1「私は通常、ビジネスメールでは『いたします』を多用しますが、社内メールでは『します』を使うことが多いです。」
- 例2「業界の慣例として、正式な文書では『いたします』が推奨されています。」
- 例3「個人的な会話では『します』を中心に使いますが、大事な取引先には『いたします』を使います。」
このような個人的な好みや業界の習慣は、敬語の使い分けに大きく影響します。
ただし、意識的に使い分けを整理することで、より適切な表現を選ぶことができます。
「いたします」の頻出パターンと注意点
ビジネスシーンでは、「いたします」を含む定型表現が多用される傾向にあります。
適切な使用と代替表現について、具体例を交えて解説します。
定型表現での使用頻度
ビジネス文書やメールで頻繁に使用される「いたします」の定型表現には、過剰使用が気になるものがあります。
それぞれの表現の適切な使用方法を見ていきましょう。
「お願いいたします」
「お願いいたします」は、ビジネス文書で最も使用頻度の高い表現の一つです。
しかし、安易な多用は避けるべきです。
- 適切な使用場面:契約書類の送付依頼、重要な確認事項の依頼
- 避けるべき状況:日常的な社内連絡、同じ文章での複数回使用
- 代替表現:「お願いします」「よろしくお願いします」
特に公式文書では、「お願いいたします」の使用は1回に留めることで、文章の品位を保つことができます。
「ご報告いたします」
正式な報告の場面で使用される「ご報告いたします」は、適切に使用すれば丁寧さを表現できる表現です。
- 適切な使用:重要な進捗報告、公式な場での報告
- 避けるべき場面:日常的な状況報告、メールでの簡易な報告
- 代替表現:「報告します」「ご報告します」
ただし、後続の文章でも「いたします」を繰り返すのは避け、簡潔な表現を心がけましょう。
より適切な代替表現
定型表現を避け、状況に応じた適切な表現を選ぶことで、より自然な文章になります。
使用シーンに合わせた言い換え例を紹介します。
過度に形式的にならず、かつ適切な敬意を示す表現の選び方について説明します。
メールの場合
- 「確認いたします」→「確認します」
- 「送付いたします」→「お送りします」
- 「添付いたしました」→「添付しました」(社内向け)
- 「ご確認いたします」→「確認します」(同僚向け)
口頭の場合
- 「ご説明いたします」→「説明させていただきます」
- 「ご連絡いたします」→「お知らせします」
オンラインミーティングの場合
- 「画面の共有をいたします」→「画面を共有します」
- 「ご説明いたします」→「説明させていただきます」
プレゼンテーションの場合
- 「ご提案いたします」→「提案させていただきます」
- 「ご説明いたします」→「説明します」(社内向け)
特に、同じ文書内での使用は1-2回に抑えることで、より自然な印象を与えることができます。
簡潔な表現への置き換え
文章を簡潔にすることで、かえって丁寧な印象を与えられる場合があります。
- 冗長な表現を避ける
- 「ご確認いたしますので」→「確認しますので」
- 「ご返答いたしたく」→「お答えしたく」
- 重複を避ける
- 「させていただきましていたします」→「させていただきます」
- 「申し上げましていたします」→「申し上げます」
特に電子メールでは、簡潔さと明確さを重視した表現を心がけましょう。
→より詳しい「お願いいたします」の使い方や代替表現については、【関連記事】「お願いいたします」の連発は要注意?代替表現も紹介 をご覧ください。
適切な使い分けのコツ

「いたします」と「します」を適切に使い分けるためのコツをいくつか紹介します。
それぞれの場面や相手に応じた適切な表現を選択することで、自然で丁寧なコミュニケーションが可能になります。
相手と場面を考慮する
「いたします」と「します」を使い分ける際には、相手の立場や年齢、場面の公式度を考慮することが重要です。
敬意を示す必要がある場面では「いたします」を選択し、カジュアルな場面では「します」を使用するのが自然です。
- 顧客や取引先:「いたします」を使用し、フォーマルさと敬意を示す。
- 例「資料をお送りいたします。」
- 上司や目上の人:丁寧な印象を与える「いたします」が適切。
- 例「本日中に対応いたします。」
- 同僚や部下:日常的な場面では「します」が適切。
- 例「今日の会議で提案します。」
- カジュアルな場面:場の空気に応じて柔軟に「します」を使用。
- 例「この件、すぐに確認しますね。」
「いたします」と「します」の使い分けは、相手への敬意と場面の公式度を踏まえて判断するのが基本です。
フォーマルな場面ほど「いたします」を多用し、親しい関係では「します」を使用することでバランスの取れた表現が可能です。
一貫性を保つ

特に長文のスピーチや文書では、敬語のレベルを一貫させることが重要です。
途中で表現を切り替えると、読み手や聞き手に違和感を与える可能性があります。
- スピーチ:最初から最後まで「いたします」を使用し、一貫性を保つ。
- 例「本日はこの場をお借りして、ご報告いたします。」
- ビジネスメール:丁寧なトーンを維持するため、「いたします」で統一。
- 例「資料を確認いたしましたので、詳細をお送りします。」
- 日常のやり取り:文書内で「いたします」と「します」を混在させず、統一する。
- 例「この件については、すぐに対応いたします。」(統一)
一貫性があることで、文章全体が洗練された印象を与えます。
特にビジネスの場面では、表現を統一することが相手への配慮としても評価されるでしょう。
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オーバーな敬語に注意
「いたします」を多用しすぎると、かえって過剰で不自然な印象を与える場合があります。
適度な使用を心がけ、必要以上に丁寧になりすぎないようにすることが大切です。
- 過剰な例 「資料をお送りいたしますので、ご確認いただければ幸いでございます。」(冗長)
- 適切な例 「資料をお送りしますので、ご確認ください。」(簡潔)
- 日常会話 必要以上に「いたします」を使わず、「します」で自然な会話を。
- 例「確認しますね。」
過度な敬語表現は相手に堅苦しい印象を与える可能性があります。
特に親しい間柄やカジュアルな場面では、簡潔でわかりやすい表現を選びましょう。
敬語の使い方をさらに深掘りしたい方には、こちらの『お手数ですが』の使い方記事がおすすめです。
【関連記事】「お手数ですが宜しくお願いします」は二重敬語?正しい依頼表現を紹介
会社の方針や業界の慣習を理解する
所属する会社や業界には、敬語の使用に関する独自の方針や慣習が存在することがあります。
それらを理解し、適切な敬語を選択することで、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
- 例1「弊社では、公式な文書では『いたします』を推奨しています。」
- 例2「IT業界では、カジュアルなやり取りが一般的で『します』がよく使われます。」
- 例3「取引先への挨拶メールでは、『いたします』が標準的です。」
特に新しい職場や業界に入る際は、その場所特有の言語文化や方針を把握することが大切です。
これにより、より適切な敬語の使い方を身につけることができます。
よくある間違い
ビジネスシーンでよく見られる「いたします」の誤用や不適切な使用例を解説します。これらの間違いを意識することで、より適切な敬語の使用が可能になります。
重複表現
敬語の重複は、かえって不自然な印象を与える原因となります。特に「いたします」との組み合わせで起こりやすい重複表現について説明します。
「させていただきます」との組み合わせ
「させていただきます」自体が謙譲表現であり、「いたします」と組み合わせると重複となります。
- 誤用例
- 「ご説明させていただきましていたします」
- 「検討させていただきましていたします」
- 正しい表現
- 「ご説明させていただきます」
- 「検討させていただきます」
特に、メールや文書では一方の表現に統一することで、簡潔で適切な文章になります。
「申し上げます」との重複
「申し上げます」は最も丁寧な謙譲表現の一つです。「いたします」との組み合わせは避けるべきです。
- 誤用例
- 「ご報告申し上げましていたします」
- 「お詫び申し上げましていたします」
- 正しい表現
- 「ご報告申し上げます」
- 「お詫び申し上げます」
文書の格式に応じて、どちらか一方の表現を選択することをおすすめします。
過剰な丁寧表現
必要以上に丁寧な表現を使用することで、かえってぎこちない印象を与えることがあります。適度な丁寧さを心がけましょう。
同一文書での過剰使用
一つの文書の中で「いたします」を多用すると、読みにくさの原因となります。
- 不適切な例
- 「ご連絡いたします。確認いたしましたら、ご報告いたします」
- 改善例
- 「ご連絡いたします。確認の上、報告させていただきます」
文書全体のバランスを考慮し、必要な場面で適切に使用することが重要です。
カジュアルな場面での使用
状況に応じた適切な丁寧さのレベルを選ぶことが重要です。
- 不適切な例
- 社内の雑談的なメールでの使用
- 親しい同僚との会話での使用
- 適切な例
- 社内の通常のやりとりは「します」を基本とする
- 重要な案件や公式な場面で「いたします」を使用
相手や状況に応じた適切な表現レベルの選択が、スムーズなコミュニケーションにつながります。
まとめ
「いたします」と「します」の適切な使い分けは、ビジネスコミュニケーションにおいて重要なスキルです。
相手や状況に応じた表現を選択することで、円滑なコミュニケーションを図ることができます。
要点の整理
- フォーマルな場面では「いたします」を使用して丁寧さを強調
- カジュアルな場面では「します」を使用して自然な会話を演出
- 混在が避けられない場合でも、一貫性を意識して表現を選ぶことが大切
日々の実践を通じて、自然な敬語の使用を身につけていきましょう。
適切な敬語の使用は、ビジネスパーソンとしての印象を大きく左右します。
この記事で紹介したポイントを参考に、自信を持って敬語を使いこなせるよう、継続的な学習と実践を心がけてください。
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よくある質問(FAQ)
「いたします」と「します」の使い分けについて、読者から寄せられる疑問にお答えします。
この記事で解説しきれなかった具体的なシーンでの使用例や、混在に関するさらなる疑問に対応しています。
ビジネスメールでは「いたします」と「します」どちらを使うべきですか?
A.
ビジネスメールでは、基本的に「いたします」を使用するのが望ましいです。
特に、顧客や取引先に送るメールでは、「いたします」を使うことで丁寧さと信頼感を与えられます。
同僚や部下向けの場合は、文脈に応じて「します」を使うことも適切です。
「いたします」と「します」を同じ文書内で使い分けても良いですか?
A.
同じ文書内での使い分けは可能ですが、一貫性が重要です。
例えば、主文では「いたします」を使用し、補足情報やカジュアルな部分では「します」を使うと自然な流れになります。
例文「資料をお送りいたします。追って詳細をご連絡します。」
日常会話でも「いたします」を使うべきですか?
A.
日常会話では「します」が適切な場合が多いです。
「いたします」を使うと、相手に堅苦しい印象を与えることがあります。
ただし、目上の人との会話やフォーマルな場面では「いたします」を使うことで、敬意を示せます。
「いたします」や「します」の過剰使用を避けるにはどうすれば良いですか?
A.
敬語の過剰使用を防ぐには、文中での頻度に注意し、簡潔な表現を心がけることが重要です。
例えば、「改めてご連絡いたします」ではなく、「後ほどご連絡します」など、冗長な表現を避けることがポイントです。
業界や職場によって使い分けのルールは異なりますか?
A.
はい、異なります。たとえば、IT業界などカジュアルな文化が根付いている職場では「します」がよく使われることがあります。
一方で、金融業界や法務関係などでは「いたします」の使用が一般的です。
職場の文化や業界の慣例を確認しましょう。
「いたします」と「させていただきます」の組み合わせは避けるべきですか?
A.
はい、避けるべきです。これらの組み合わせは二重敬語となり、不適切です。
- 誤用例「ご報告させていただきましていたします」
- 正しい表現「ご報告させていただきます」または「ご報告いたします」
上記の「お願いいたします」の多用に関する質問でも触れたように、敬語は適度な使用を心がけましょう。
「お願いいたします」を多用していますが、問題ありますか?
A.
「お願いいたします」の多用は避けることをおすすめします。
以下の理由と対策を意識しましょう。
- 同じ表現の繰り返しで文章が冗長になる
- 形式的で事務的な印象を与える可能性がある
- 本当に丁寧さを示したい場面での効果が薄れる
代わりに状況に応じて以下のような表現を使い分けると自然です。
- 「お願いします」(基本的な依頼)
- 「よろしくお願いします」(一般的な依頼)
- 「ご検討をお願いします」(具体的な依頼)
「ご報告いたします」は正しい表現ですか?
A.
「ご報告いたします」は正しい表現ですが、使用には注意が必要です。
適切な使用場面
- 公式な報告書の冒頭
- 重要な進捗報告時
- フォーマルな会議での報告
避けるべき場面
- 日常的な報告メール
- 社内の簡易な報告
- カジュアルなコミュニケーション
代替表現として以下が使えます。
- 報告します
- ご報告します
- お知らせします
状況や相手に応じて、適切な表現を選択することが重要です。