「ご承知おきください」は、情報共有時の丁寧な依頼表現として広く使用されます。
ただし、使い方を誤ると命令的な印象を与える可能性があるため、適切な使用方法と状況に応じた言い換え表現を理解することが重要です。
この記事では、「ご承知おきください」の正しい使い方から、より丁寧な代替表現まで、実例を交えて詳しく解説します。
「ご承知おきください」の基本
ビジネスシーンでよく使用される「ご承知おきください」は、単なる通知や報告以上の意味を持つ表現です。
相手への配慮と、情報の重要性を適切に伝える役割を果たします。
表現の意味と本来の用途
「ご承知おきください」は、「このことを覚えておいてください」という意味を、敬意を込めて伝える表現です。
単なる情報共有ではなく、以下のような意図が含まれています。
- 今後の業務に関係する重要な情報であること
- 相手に確実に認識してほしい内容であること
- 継続的に意識してほしい事項であること
この表現を使用することで、情報の重要性を適切に示しながら、相手への敬意も表すことができます。
通知や連絡事項を伝える際に、形式的な「お知らせいたします」よりも、受け手の理解と認識を求める意図を込められる点が特徴です。
適切な使用場面と例文
ビジネスの様々な場面で活用できますが、特に効果的な使用場面があります。
- 社内での使用例
- 「新しい稟議システムの運用開始について、ご承知おきください」
- 「来月からの新たな業務フローにつきまして、ご承知おきください」
- 取引先への使用例
- 「弊社担当者の変更につきまして、ご承知おきください」
- 「年末年始の営業日程に関しまして、ご承知おきください」
これらの場面では、単なる情報提供以上の意味、つまり「今後の業務に関わる重要事項として認識してください」という意図を適切に伝えることができます。
特に、組織的な対応が必要な事項や、継続的な注意が必要な内容を伝える際に効果的です。
誤解を避けるための使い方
「ご承知おきください」は、使い方によっては命令的な印象を与えたり、過剰に形式的な印象を与えたりする可能性があります。
適切な印象を与えるためには、文脈や表現の組み合わせ方に注意が必要です。
前後の文脈での工夫
丁寧かつ柔らかい印象を与えるためには、前後の文脈を適切に整えることが重要です。
以下のような工夫が効果的です。
- 前置き表現の活用
- 「恐れ入りますが、以下の件につきまして」
- 「業務ご多忙のところ恐縮ですが」
- 結びの言葉の工夫
- 「何卒よろしくお願い申し上げます」
- 「ご協力賜りますよう、お願い申し上げます」
このような表現を組み合わせることで、「ご承知おきください」の硬さが和らぎ、より丁寧な印象の文章となります。
ただし、このような敬語表現の組み合わせは、状況に応じて適度に調整することが大切です。
過剰な敬語の使用は、かえって形式的な印象を与える可能性があります。
よくある間違いと対処法
「ご承知おきください」を使用する際、特に注意が必要な間違いがあります。
これらを理解し、適切に対処することで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。
- 二重敬語の例
- ❌「ご承知おきしていただきますよう、お願いいたします」
- ⭕「ご承知おきくださいますよう、お願い申し上げます」
- 命令的になりやすい表現パターン
- ❌「速やかにご承知おきください」
- ⭕「恐れ入りますが、ご承知おきくださいますようお願い申し上げます」
特に気をつけたいのは、「承知」という言葉自体が持つ硬さです。
この硬さを和らげるためには、前後の言葉遣いを丁寧にし、相手への配慮を示す表現を適切に加えることが効果的です。
また、急かすような表現や強制的な印象を与える言葉との組み合わせは避けるべきです。
「ご承知おき」と敬語表現の組み合わせ方
ビジネス文書では、「ご承知おき」と他の敬語表現を組み合わせることが多くあります。
適切な組み合わせは文章の品位を高めますが、不適切な組み合わせは二重敬語となったり、過剰な丁寧さを感じさせたりする原因となります。
【関連記事】「いたします」「します」の混在・使い分け完全ガイド
「お願いいたします」との組み合わせ方
「お願いいたします」は「ご承知おき」とよく組み合わせる表現ですが、その使い方には注意が必要です。
- 正しい組み合わせ例
- 「ご承知おきくださいますよう、お願い申し上げます」
- 「何卒ご承知おきくださいますようお願いいたします」
- 避けるべき表現
- 「ご承知おきいたしますよう、お願い申し上げます」(「いたします」が不要)
- 「ご承知おき願います」(「お」や「いたします」が抜けて簡素すぎる)
特に重要なのは、「ご承知おき」の後に続く助動詞や補助動詞の選び方です。「ください」「くださいますよう」といった表現を適切に使用することで、自然な敬意表現となります。
また、文末の「お願いいたします」「お願い申し上げます」は、状況や相手に応じて使い分けることで、より適切な丁寧さを表現できます。(→「お願い申し上げます」の正しい使い方はこちら)
【関連記事】「お願い申し上げます」は間違った敬語で重複表現なの?
目上の方への使用時の注意点
目上の方に対しては、より慎重な言葉選びが求められます。
単に「ご承知おきください」と伝えるだけでなく、状況に応じた丁寧な表現を心がけましょう。
- より丁寧な言い方のポイント
- 謙譲表現を適切に組み合わせる
- 前置きで配慮を示す
- 文末表現を丁寧にする
- 具体的な言い換え例
- 「恐れ入りますが、ご承知おきいただけますと幸いです」
- 「誠に恐縮ではございますが、ご承知おきくださいませ」
- 「何卒ご承知おきくださいますよう、謹んでお願い申し上げます」
これらの表現は、単なる情報共有以上の配慮を示すことができます。
ただし、使用する際は相手との関係性や案件の重要度を考慮し、過剰な敬語使用にならないよう注意が必要です。
特に日常的なコミュニケーションでは、適度な丁寧さを保ちながら、自然な印象を与えることを心がけましょう。
【関連記事】敬語の落とし穴!過剰敬語を避ける7つのテクニック
状況別の適切な代替表現
「ご承知おきください」は便利な表現ですが、状況によってはより適切な表現がある場合があります。
場面や相手との関係性に応じて、最適な表現を選ぶことで、よりスムーズなコミュニケーションが可能になります。
フォーマルな場面での言い換え
公式文書や重要な案件の際には、より格式の高い表現が求められます。
以下のような表現は、特に改まった場面で効果的です。
- 正式文書での表現
- 「下記の件につきまして、ご高配賜りたく存じます」
- 「本件について、ご認識いただきたく、ご案内申し上げます」
- 「以下の事項につきまして、ご留意いただけますと幸いです」
これらの表現は、単なる情報共有以上に、相手への敬意と案件の重要性を適切に伝えることができます。
特に取引先や重要なステークホルダーへの連絡の際は、このような丁寧な表現を用いることで、ビジネス上の信頼関係を築くことができます。
カジュアルな場面での言い換え
社内メールや日常的なコミュニケーションでは、より柔らかい表現を選ぶことで、親しみやすい印象を与えることができます。
- 社内メールでの表現
- 「以下の点にご注意いただければと存じます」
- 「下記の内容をご確認いただけますでしょうか」
- 「以下の件について、ご理解いただけますと助かります」
これらの表現は、必要な敬意は保ちながらも、より自然で親しみやすい印象を与えることができます。
ただし、相手との関係性や案件の重要度に応じて、適切な表現レベルを選ぶことが重要です。
また、同じ文書内での表現の一貫性にも注意を払う必要があります。
【関連記事】「ご連絡ありがとうございます」の言い換え表現50選|ビジネスメールをより印象的に
まとめ
「ご承知おきください」は、ビジネスシーンで広く使用される重要な表現ですが、その使用には適切な配慮が必要です。
以下の点を意識することで、より効果的なコミュニケーションが可能となります。
- 基本的な使い方を理解し、場面に応じて適切に使用する
- 前後の文脈を工夫し、命令的な印象を避ける
- 二重敬語を避け、自然な敬語表現を心がける
- 状況に応じて、より適切な代替表現を選択する
特に重要なのは、相手との関係性や案件の重要度を考慮した上で、適切な丁寧さのレベルを選ぶことです。
過度に形式的な表現を避けながら、必要な敬意は保つというバランスを取ることで、円滑なビジネスコミュニケーションが実現できます。
よくある質問(Q&A)
「ご承知おきください」の使用に関して、多くの方が疑問や不安を感じています。
特に、目上の方への使用や丁寧さのレベルについての質問が多く寄せられます。
以下では、よくある質問とその回答をまとめました。相手や状況に応じた適切な使い方の参考にしてください。
「ご承知おきください」は失礼な表現ですか?
A.
基本的に失礼な表現ではありません。
ただし、適切な前後の文脈や、状況に応じた丁寧さのレベルを選ぶことが重要です。
特に目上の方への使用時は、より丁寧な表現を組み合わせることで、適切な敬意を示すことができます。
目上の方への使用は避けるべきですか?
A.
必ずしも避ける必要はありませんが、より丁寧な言い回しを心がけましょう。
「恐れ入りますが」などの前置きや、「くださいますよう、お願い申し上げます」といった丁寧な結びの表現を組み合わせることで、適切な敬意を示すことができます。
「いたします」との組み合わせで気をつけることは?
A.
「ご承知おきいたします」は二重敬語となるため、避けるべき表現です。
(→「います・いたします」の使い分けについて詳しくはこちら)
代わりに「ご承知おきください」「ご承知おきくださいますよう、お願い申し上げます」などの表現を使用しましょう。
社内メールでも使って問題ないですか?
A.
問題ありません。
ただし、日常的なコミュニケーションでは、より柔らかい表現(「ご確認いただければ幸いです」など)を選ぶことで、自然な印象を与えることができます。
案件の重要度に応じて、適切な表現を選びましょう。
より丁寧な言い方にするにはどうすればよいですか?
A.
以下の方法で、より丁寧な表現にすることができます
- 「恐れ入りますが」などの前置きを加える
- 「くださいますよう」という補助表現を使用する
- 「お願い申し上げます」など、丁寧な結びの言葉を付け加える
- 状況に応じて「ご高配賜りたく存じます」といった、より格式高い表現に言い換える
これらのポイントを意識することで、相手と状況に応じた適切な丁寧さの表現が可能となります。