敬語は日本語の中でも特に難しい部分の一つです。
その中でも、謙譲語と尊敬語の混同は多くの人が陥りやすい間違いです。
本記事では、日常生活やビジネスシーンでよく見られる謙譲語と尊敬語の混同について、具体例を挙げながら解説します。
これらの例を知ることで、自分の言葉遣いを見直すきっかけになるでしょう。
謙譲語を尊敬語として使用する間違い
謙譲語は本来、自分や自分側の行為を低めて表現する言葉です。
しかし、これを相手や目上の人の行為に使ってしまう間違いがよく見られます。
例えば、「先生がお伺いになります」という表現を耳にすることがあります。
しかし、「伺う」は謙譲語であり、目上の人の行為に使うのは適切ではありません。
正しくは「先生がいらっしゃいます」や「先生がお越しになります」となります。
同様に、「部長がご説明申し上げます」という表現も間違いです。
「申し上げる」は謙譲語であり、目上の人の行為には使えません。
正しくは「部長が説明いたします」や「部長がご説明になります」です。
尊敬語を謙譲語として使用する間違い
反対に、尊敬語を自分や自分側の行為に使ってしまう間違いも見られます。
例えば、「私がお客様にご案内いたします」という表現がよく使われますが、これは誤りです。
「ご案内する」は本来相手の行為に使う尊敬語ですので、自分の行為には使えません。
正しくは「私がお客様をご案内いたします」です。
また、「私どもが御社にお伺いいたします」という表現も間違いです。
「お伺いする」は尊敬語であり、自分の行為に使うのは適切ではありません。
正しくは「私どもが御社に伺います」です。
謙譲語と尊敬語の使い分けが難しい動詞
一部の動詞は、謙譲語と尊敬語の形が似ているため、使い分けが特に難しくなっています。
例えば、「知る」という動詞の場合、謙譲語は「存じる」、尊敬語は「ご存じ」です。
「私はその件を存じております」は正しい使い方ですが、「お客様はその件をご存じでしょうか」と使うべきところを「お客様はその件を存じておられますか」と言ってしまう間違いがよく見られます。
同様に、「見る」の場合、謙譲語は「拝見する」、尊敬語は「ご覧になる」です。
「資料を拝見させていただきました」は正しいですが、「社長が資料をご覧になりました」とすべきところを「社長が資料を拝見されました」としてしまう間違いもあります。
謙譲語と尊敬語の正しい使い方
謙譲語と尊敬語を正しく使い分けるためには、以下の点を意識することが大切です。
- 謙譲語は自分や自分側の行為を低めて表現する
- 尊敬語は相手や目上の人の行為を高めて表現する
- 動作の主体が誰なのかを常に意識する
例えば、「社長に報告する」という場面を考えてみましょう。
- 正しい使い方「私が社長に報告いたします」(謙譲語)
- 正しい使い方「社長がご報告になります」(尊敬語)
- 間違った使い方「私が社長にご報告いたします」(尊敬語を自分の行為に使っている)
日常生活での具体例
謙譲語と尊敬語の混同は、ビジネスシーンに限らず日常生活でもよく見られます。
例えば、レストランでの会話で「お客様がお召し上がられました」という表現を耳にすることがありますが、これは誤りです。
「召し上がる」は尊敬語であり、「られる」を付ける必要はありません。
正しくは「お客様が召し上がりました」です。
また、病院での会話で「先生がお薬を頂戴しました」という表現も間違いです。
「頂戴する」は謙譲語であり、医師の行為に使うのは適切ではありません。
正しくは「先生がお薬を出してくださいました」となります。
まとめ
謙譲語と尊敬語の混同は、日本語を母語とする人でもよく犯してしまう間違いです。
本記事で紹介した例は、日常生活やビジネスシーンでよく見られるものばかりです。
これらの間違いを意識し、正しい敬語の使い方を心がけることで、より洗練されたコミュニケーションが可能になるでしょう。
敬語は難しいものですが、基本的な原則を理解し、日々の会話の中で少しずつ改善していくことが大切です。
謙譲語と尊敬語を正しく使い分けることで、相手への適切な敬意を表現すると同時に、自分の言葉遣いの正確さも示すことができます。
敬語の使用に自信が持てない場合は、まずは基本的な丁寧語を使いながら、徐々に適切な謙譲語や尊敬語の使用を増やしていくのもよい方法です。