ビジネス文書やメールで思わず間違えてしまう日本語表記。
「申し訳ございません」か「申し訳ありません」か、「了解しました」は使っても良いのか、「ご確認お願いします」は敬語として正しいのか…。
こうした迷いやすいポイントは、ビジネスパーソンの評価を左右することも少なくありません。
本記事では、プロの日本語コンサルタントと人事担当者の調査に基づき、ビジネスシーンで最も間違えやすい表記をランキング形式で紹介。
それぞれの正しい表現と具体的な使用例を解説し、あなたのビジネス文書力を確実に向上させます。
この記事でわかること
- ビジネス日本語でよく間違える表記TOP20とその正しい使い方
- 敬語・謙譲語・丁寧語の適切な使い分け方
- 「させていただく」「ご確認お願いします」などの過剰敬語の修正法
- 間違いやすい漢字・送り仮名の正しい表記ルール
- ビジネス文書の品質を高める校正・チェックのポイント
この記事を読めば、ビジネスシーンでよく見られる日本語の誤用を避け、プロフェッショナルな印象を与える文書が作成できるようになります。
ビジネス日本語の表記ミスが及ぼす影響
ビジネスシーンでの言葉遣いは、あなたのプロフェッショナリズムを映し出す鏡です。
一見小さな表記ミスでも、取引先や上司からの信頼を損ねる可能性があります。
第一印象を左右する言葉の正確さ
ビジネスコミュニケーションにおいて、文書やメールは相手があなたを評価する重要な材料となります。
日本語の正確さは、あなたの仕事への姿勢や注意力を反映していると判断されることが多いのです。
具体例
「先日のご提案に対するご返答ありがとうございます」(誤)
「先日のご提案に対するご回答ありがとうございます」(正)
このような微妙な違いでも、言語感覚の鋭い相手には「この人は言葉の使い分けができていない」という印象を与えかねません。
間違いやすいポイント
特に日本語ネイティブでも混同しやすい敬語表現や送り仮名のルールは、正確に理解していないとミスを繰り返してしまいます。
新入社員からベテランまで、誰もが一度は間違えた経験があるでしょう。
人事評価への影響
採用・昇進の場面において、日本語の正確さは意外に重視されています。
ある調査によれば、人事担当者の78%が「ビジネス文書の日本語力」を評価項目に含めていると回答しています。
特に管理職への昇進では、部下や取引先とのコミュニケーション能力の指標として、日本語の正確さが判断材料になるケースが多いのです。
敬語関連の間違いやすい表記(ランキング1-5位)
敬語の誤用はビジネス文書で最も目立つミスです。
特に上位5つの表現は、多くのビジネスパーソンが日常的に間違えやすいポイントです。
「ご確認お願いします」と「ご確認をお願いします」
「ご確認お願いします」は助詞「を」が抜けた不完全な文です。
正しくは「ご確認をお願いします」と表記します。
間違いやすいポイント
ビジネスメールでは時間短縮のため助詞を省略する傾向がありますが、敬語表現では特に助詞の省略は避けるべきです。
具体例
「添付資料のご確認お願いします」(誤)
「添付資料のご確認をお願いします」(正)
【関連記事】「ご確認お願いします」は不適切?正しい依頼表現と例文テンプレート集
「させていただく」の過剰使用
「させていただく」は本来、相手の許可や恩恵を受けて行う行為に使用します。
しかし、現在のビジネスシーンでは過剰に使われる傾向があります。
間違いやすいポイント
自分の意志だけで完結する行為や、相手の許可が必要ない場面でも使ってしまう点です。
具体例
「本日は欠席させていただきます」(許可を得ていない場合は誤)
「本日は欠席いたします」(正)
「資料を送付させていただきます」(相手のためにする行為なので正)
「申し訳ございません」と「申し訳ありません」
どちらも正しい表現ですが、「ございません」はより丁寧な表現です。
間違いやすいポイント
「申し訳ございません」は二重敬語と誤解されることがありますが、「申し訳」は名詞であるため、「ございません」との組み合わせは正しい敬語表現です。
具体例
社内メール:「申し訳ありません」
社外・上司向け:「誠に申し訳ございません」
「ご返答」と「ご回答」の使い分け
「返答」は会話のやり取りに対する返事、「回答」は質問や問い合わせに対する返事という違いがあります。
間違いやすいポイント
両者の意味の違いを理解せず、混同して使ってしまうことです。
具体例
「アンケートのご返答ありがとうございます」(誤)
「アンケートのご回答ありがとうございます」(正)
「先ほどのお電話でのご回答ありがとうございます」(誤)
「先ほどのお電話でのご返答ありがとうございます」(正)
「お伺いします」と「伺います」の違い
「伺う」は謙譲語であるため、本来「お」をつける必要はありません。
しかし、現代のビジネスシーンでは「お伺いします」という表現も広く使われています。
間違いやすいポイント
「お」をつけることで丁寧になると誤解している点です。
謙譲語に「お」をつけると二重敬語になる可能性があります。
具体例
「明日お客様のオフィスにお伺いします」(厳密には誤)
「明日お客様のオフィスに伺います」(正)
漢字・送り仮名の間違いやすい表記(ランキング6-10位)
送り仮名や漢字の選択は、ビジネス文書の品質に直結します。
以下は特に間違いやすい表記です。
「いたす/致す」の送り仮名
「いたす」を漢字で書く場合、正しくは「致す」です。
「致します」「致しました」など活用形も同様に送り仮名のルールに従います。
間違いやすいポイント
「致す」と「致ます」のように、送り仮名の範囲を誤解している点です。
具体例
「対応致ます」(誤)
「対応致します」(正)
「確認致しかねます」(丁寧な表現として正しい)
「行なう/行う」の送り仮名問題
公用文の送り仮名の付け方によれば、「行う」が正しいとされています。
しかし、「行なう」も慣用的に広く使われています。
間違いやすいポイント
どちらも使われているため混乱しやすい点です。
公式文書では「行う」が推奨されます。
具体例
「プロジェクトを行なう予定です」(慣用的には許容されるが公用文では誤)
「プロジェクトを行う予定です」(公用文での正しい表記)
「ご連絡宜しくお願いします」の「宜しく」表記
「よろしく」の漢字表記は「宜しく」ですが、ビジネス文書では平仮名で「よろしく」と書くことが推奨されています。
間違いやすいポイント
「宜しく」は旧字体風の印象を与えるため、現代のビジネス文書では避けられる傾向にあります。
具体例
「ご確認の程、宜しくお願い申し上げます」(古風な印象)
「ご確認の程、よろしくお願い申し上げます」(現代的で推奨される表記)
「確り/しっかり」の漢字と平仮名
「しっかり」は平仮名で書くのが一般的です。
「確り」という漢字表記もありますが、ビジネス文書では平仮名表記が推奨されます。
間違いやすいポイント
漢字で書こうとして不自然な表現になってしまう点です。
具体例
「確り確認いたします」(不自然)
「しっかり確認いたします」(自然な表現)
「頂く/いただく」の使い分け
「いただく」は謙譲語で、相手から何かを受ける際に使います。
漢字表記「頂く」も可能ですが、敬語として使う場合は平仮名の「いただく」が一般的です。
間違いやすいポイント
「頂く」と「いただく」の使い分けが曖昧になりがちです。
具体例
「ご意見を頂きありがとうございます」(丁寧さが不足)
「ご意見をいただきありがとうございます」(丁寧で推奨される表現)
ビジネスメールでの間違いやすい表現(ランキング11-15位)
ビジネスメールは日常業務で最も使用頻度の高いコミュニケーションツールです。
ここでの表現ミスは即座に相手に伝わります。
「お疲れ様です」と「お疲れさまです」
どちらも正しい表現ですが、「お疲れさまです」が公用文での正式な表記とされています。
間違いやすいポイント
「様」と「さま」の使い分けが曖昧になりがちです。
公式な場では「さま」が推奨されます。
具体例
社内メール:「お疲れ様です」(慣用的に許容)
公式文書:「お疲れさまです」(正式な表記)
「こんばんは」と「こんばんわ」
正しくは「こんばんは」です。
「こんばんわ」は誤った表記です。
間違いやすいポイント
「こんにちは」と同様に、語尾の発音が「わ」に聞こえるため混同されやすい点です。
具体例
「こんばんわ。お世話になっております。」(誤)
「こんばんは。お世話になっております。」(正)
「了解しました」と「承知しました」
「了解」は同等または目下の人に使う表現で、目上の人には「承知しました」を使うのが適切です。
間違いやすいポイント
「了解」が日常的に使われるようになり、ビジネスシーンでも無意識に使ってしまう点です。
具体例
上司への返信:「了解しました」(不適切)
上司への返信:「承知いたしました」(適切)
同僚への返信:「了解しました」(適切)
「お忙しいところ」と「ご多忙のところ」
どちらも正しい表現ですが、「ご多忙のところ」がより丁寧な表現です。
間違いやすいポイント
接頭語「お」と「ご」の使い分けのルールを誤解している点です。
具体例
「お忙しいところ恐れ入ります」(丁寧さは十分)
「ご多忙のところ恐縮ではございますが」(より丁寧な表現)
メール署名の「様」と「御中」の使い分け
個人宛なら「様」、組織・部署宛なら「御中」を使います。
間違いやすいポイント
個人名と組織名が併記されている場合の使い分けが難しい点です。
具体例
「株式会社○○ 山田太郎様」(個人宛として正しい)
「株式会社○○御中」(組織宛として正しい)
「株式会社○○ 営業部御中」(部署宛として正しい)
文法・表現の間違いやすい用法(ランキング16-20位)
文法や表現の誤用は、文章全体の印象を大きく左右します。
特に以下の5つは要注意です。
「〜になります」の過剰使用
「私は山田になります」のような使い方は不自然です。
自分自身を指す場合は「山田です」が自然です。
間違いやすいポイント
丁寧に話そうとして「〜になります」を多用してしまう点です。
具体例
「担当は私になります」(不自然)
「担当は私です」(自然)
「料金は5,000円になります」(価格変更の場合は正しい)
「料金は5,000円です」(現状の価格を伝える場合は正しい)
「〜かと思います」のあいまい表現
「送付しておりますかと思います」のような表現は、自分の行動に不確かさを示すため不適切です。
間違いやすいポイント
控えめに表現しようとして、不必要にあいまいな表現になってしまう点です。
具体例
「資料を添付しておりますかと思います」(不適切)
「資料を添付しております」(適切)
「〜の方」(人を指す場合の過剰敬語)
「お客様の方」「山田様の方」のように、人を指す場合に「〜の方」とすると過剰敬語になります。
間違いやすいポイント
丁寧さを出そうとして「方」を付けてしまう点です。
具体例
「田中様の方にお渡しください」(過剰)
「田中様にお渡しください」(適切)
「どちらの方が担当ですか」(選択を尋ねる場合は正しい)
二重敬語(「お召し上がりください」など)
「お召し上がりください」は「召し上がる」自体が敬語であるため、「お」をつけると二重敬語になります。
間違いやすいポイント
すでに敬語である表現に、さらに敬語表現を重ねてしまう点です。
具体例
「お客様にお聞きいたしました」(二重敬語)
「お客様に伺いました」(適切)
「お客様にご説明お願いします」(不適切)
「お客様にご説明をお願いします」(適切)
「ので」と「から」の使い分け
ビジネス文書では理由を述べる際、「から」より「ので」の方が柔らかい印象を与えます。
間違いやすいポイント
カジュアルな表現「から」をビジネス文書で使ってしまう点です。
具体例
「期限に間に合わないから、延長をお願いします」(ややカジュアル)
「期限に間に合わないので、延長をお願いいたします」(適切)
間違いを防ぐビジネス文書チェックリスト
ビジネス文書での間違いを防ぐには、体系的なチェック方法が効果的です。
以下のチェックリストを活用しましょう。
送信前の確認ポイント
ビジネス文書を送信する前に、以下のポイントを確認することで多くのミスを未然に防げます。
具体例
- 敬語・謙譲語・丁寧語の使い分けは適切か
- 二重敬語や過剰敬語はないか
- 送り仮名は正しいか
- 助詞の抜けはないか
- 文末表現は統一されているか
間違いやすいポイント
校閲・校正の際に自分のミスを見落としがちです。
一度書いた文章は時間を置いてから読み返すと効果的です。
よくある間違いの自動チェック方法
文書作成ソフトの校正機能やオンラインツールを活用することで、効率的にチェックできます。
具体例
- Microsoft Wordの校閲機能
- Googleドキュメントのスペルチェック
- 日本語校正サービス「部首メーカー」
- 校正支援ツール「Just Right!」
間違いやすいポイント
自動チェックツールは万能ではありません。
特に文脈に依存する表現の誤りは検出されないことがあります。
同僚や上司に確認を依頼する際のポイント
重要な文書は第三者の目で確認してもらうことが有効です。
具体例
- 「特に〇〇の部分を確認していただけますか」と具体的な確認ポイントを示す
- 十分な確認時間を設ける
- フィードバックを記録し、同じミスを繰り返さないようにする
間違いやすいポイント
確認を依頼する際、漠然と「チェックしてください」と伝えるだけでは不十分です。
具体的な懸念点を伝えましょう。
ビジネス日本語力を向上させるコツと推奨ツール
日本語力は継続的な努力で着実に向上します。
効率的に日本語力を高めるコツとツールを紹介します。
おすすめの日本語校正ツール
ビジネス文書作成をサポートする便利なツールを活用しましょう。
具体例
- Grammarly日本語版: 文法や表現のミスを自動検出
- DeepL Write: 自然な日本語への書き換え提案
- Microsoft Editor: Wordやブラウザで使える校正ツール
- ChatGPT: 文章の改善提案を得られる
間違いやすいポイント
ツールに頼りすぎると、自分の日本語力が向上しない恐れがあります。
ツールはあくまで補助として活用しましょう。
ビジネス日本語の参考書籍
体系的に学ぶなら、信頼できる参考書が効果的です。
具体例
- 『ビジネス文書の書き方マニュアル』
- 『敬語の使い方が面白いほど身につく本』
- 『誤用から学ぶ 現代日本語』
- 『日本語の作法』
間違いやすいポイント
書籍の内容を読むだけでなく、実際に文書作成で活用することが重要です。
日本語力を向上させる日常の習慣
日常的な取り組みがビジネス日本語力の向上につながります。
具体例
- 新聞や質の高いビジネス記事を定期的に読む
- 書いた文章を音読して違和感がないか確認する
- 正しい敬語表現をメモアプリに記録して復習する
- 優れたビジネスメールを「お手本フォルダ」に保存する
間違いやすいポイント
短期間での劇的な上達を期待するのではなく、継続的な積み重ねが大切です。
まとめ:正しい日本語表記でビジネス評価を高める
本記事では、ビジネス日本語でよく間違える表記TOP20とその正しい使い方を解説しました。
敬語・謙譲語・丁寧語の適切な使い分け、過剰敬語の修正法、漢字・送り仮名の正しい表記ルールなど、実践的なポイントを紹介しました。
これらの知識を活用し、ビジネス文書の品質を高めるための校正・チェックを習慣化することで、あなたのビジネスにおける評価は確実に向上するでしょう。
単なる言葉遣いの問題と軽視せず、プロフェッショナルとしての重要なスキルとして日本語力を磨き続けてください。
特に重要なのは以下の3つのポイントです
- 敬語表現の基本ルールを理解し、過剰敬語や二重敬語を避ける
- 送信前に文書を見直し、特に助詞の抜けや送り仮名に注意する
- 継続的に学習する習慣をつけ、自分の弱点を認識して改善する
ビジネスにおける正確な日本語表現は、あなたの信頼性とプロフェッショナリズムを高める重要な武器となります。
この記事で紹介したポイントを意識し、日々の業務に活かしていきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1:「させていただく」は本当にすべて間違いなのですか?
A1:すべてが間違いというわけではありません。
「させていただく」は相手の許可や恩恵を受けて行う行為を表す場合に適切です。
例えば「ご提案させていただく」「お手伝いさせていただく」などは正しい用法です。
ただし、自分の意志だけで完結する行為には使わないようにしましょう。
Q2:社内と社外で表現を使い分けるコツはありますか?
A2:社内ではやや砕けた表現でも許容されることがありますが、社外向けではより丁寧な表現を心がけましょう。
例えば、社内なら「了解しました」でも問題ないケースが多いですが、社外では「承知いたしました」が適切です。
また、社外文書では「ございます」「申し上げます」など、より丁寧な表現を意識的に使うとよいでしょう。
Q3:日本語校正ツールはどれくらい信頼できますか?
A3:校正ツールは基本的な文法ミスや一般的な表現の誤りを検出するのに役立ちますが、文脈に依存する表現や業界特有の用語については正確に判断できないことがあります。
最終的な判断は人間が行う必要があります。
特に重要な文書では、ツールによるチェック後に必ず人の目でも確認することをおすすめします。
Q4:ビジネス敬語の学び直しにおすすめの方法は?
A4:体系的に学ぶなら、まず敬語の三分類(尊敬語・謙譲語・丁寧語)を理解することから始めましょう。
実用的な参考書を1冊選んで学習し、日常業務で意識的に使うことが効果的です。
また、社内の先輩や上司のメールを参考にしたり、オンライン講座を活用するのもおすすめです。
敬語は使い続けることで自然に身につきます。
Q5:外国人社員への日本語指導のポイントは?
A5:外国人社員に日本語を指導する際は、まず基本的なビジネス表現から教え、徐々に敬語表現へと進むとよいでしょう。
敬語の概念自体が母国語にない場合もあるため、単なる言い換えではなく、背景にある「相手を敬う」「自分を低くする」という概念から説明すると理解が深まります。
また、実際のビジネスシーンで使うフレーズ集を提供したり、定期的なフィードバックを行うことも効果的です。
特に「課題→例文→実践」のサイクルを繰り返すことで、自然な日本語が身につきやすくなります。