ビジネス文書やメールでよく目にする「拝見させていただきました」という表現。
丁寧さを表現しようとする意図は理解できますが、この言葉遣いが冗長で不適切だと指摘されることがあります。
本記事では、この表現の問題点を探り、状況に応じたより適切な言い換え方を提案します。
「拝見させていただきました」の問題点
「拝見させていただきました」という表現には、いくつかの問題点があります。
- 冗長性
「拝見する」という言葉自体が敬語表現であるにもかかわらず、さらに「させていただく」という謙譲表現を重ねています。 - 違和感
「させていただく」は本来、相手の許可や恩恵によって行為を行うことを表す表現です。しかし、文書を読むという行為に対して許可を得る必要はありません。 - マンネリズム
過剰に丁寧な表現を使おうとするあまり、無意識のうちに使ってしまう傾向があります。
例えば、「お送りいただいた資料を拝見させていただきました」という文では、「拝見させていただきました」の部分が特に冗長に感じられます。
適切な言い換え方
状況や文脈に応じて、以下のような言い換えが考えられます。
- 「拝見しました」
最もシンプルで適切な言い換えです。「拝見する」自体が敬語表現であるため、十分に丁寧さを表現できます。 - 「確認しました」
より事務的な印象を与えたい場合に適しています。 - 「読ませていただきました」
やや丁寧な表現を維持しつつ、冗長さを軽減できます。 - 「目を通しました」
カジュアルな場面や、軽く確認したことを伝えたい場合に使えます。
実際の使用例を見てみましょう。
ビジネスメールの例
「先ほどお送りいただいた企画書を拝見しました。」
SNSでのやりとりの例
「あなたの投稿、読ませていただきました。とても興味深い内容でしたね。」
場面別の適切な表現
それでは、具体的な場面ごとに、「拝見させていただきました」の適切な言い換え方を見ていきましょう。
ビジネス文書やメール
ビジネスシーンでは、適度な丁寧さを保ちつつ、簡潔さも重要です。
例「ご提案の内容を拝見させていただきました」
↓
改善例「ご提案の内容を拝見しました」
この言い換えにより、丁寧さを保ちながらも無駄な冗長さを避けることができます。
学術的な場面
論文や研究発表のフィードバックなど、学術的な場面では、より客観的で明確な表現が好まれます。
例「あなたの論文を拝見させていただきました」
↓
改善例「あなたの論文を読み、以下の点について考察しました」
この言い換えにより、論文を読んだ後の具体的なアクションや思考のプロセスが明確になります。
SNSでのコミュニケーション
SNSでは、より親しみやすく自然な表現が適しています。
例「あなたの投稿を拝見させていただきました」
↓
改善例「あなたの投稿を読みました。とても興味深かったです」
この言い換えにより、より自然で親しみやすい印象を与えることができます。
カスタマーサポート
顧客対応の場面では、丁寧さを保ちつつも、明確さと簡潔さが重要です。
例「お客様のご意見を拝見させていただきました」
↓
改善例「お客様のご意見を確認いたしました。ご指摘ありがとうございます」
この言い換えにより、顧客の意見をしっかりと受け止めた印象を与えつつ、次のアクションにつなげやすくなります。
「拝見させていただきました」を避けるためのポイント
- 文脈を考慮する
誰に対して、どのような状況で使用するのかを常に意識しましょう。 - 簡潔さを心がける
伝えたい内容を明確に、そして簡潔に表現することを意識しましょう。 - 適切な敬語を使用する
過剰な敬語の使用は避け、状況に応じた適切な敬語を選びましょう。 - 具体的な行動や感想を添える
単に「見た」ことを伝えるだけでなく、その結果どう思ったのか、どのような行動をとるのかを付け加えることで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。
まとめ
「拝見させていただきました」という表現は、丁寧さを表現しようとするあまり、冗長で不自然な印象を与えることがあります。
状況や相手に応じて、より適切で自然な表現を選ぶことが重要です。
ビジネスシーンでは「拝見しました」、カジュアルな場面では「読みました」など、シンプルな表現を心がけましょう。
また、単に「見た」ことを伝えるだけでなく、その後の感想や行動につなげることで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。
言葉遣いは、相手との関係性や状況によって適切に変化させるべきものです。
過剰な丁寧さよりも、誠実さと明確さを重視することが、円滑なコミュニケーションの鍵となるでしょう。
日々の会話や文書作成の中で、少しずつ意識を高めていくことで、より適切で効果的な表現を身につけることができます。
